Press Release
アルファ コンテンポラリーは、2023 年 6 月より東京都港区の慶應義塾大学の三田キャンパスの東門の隣に構え、韓国を中心とした海外のアートシーンと日本のアートシーンを日本のみならず、世界に向けて発信して行く。日本の啓蒙思想家であり、慶応義塾大学の創設者である福沢諭吉が啓蒙期の日本の新しい時代を先導した精神と志を受け継ぎ、時代に翻弄されない深い土台を持って、激変するこれからの新しい時代を先導して行く芸術の発信地となることを志す。
アルファ コンテンポラリーは、開館を記念し、その初となる展示として韓国の現在と次のアートシーンを紹介するシリーズである “Korean Contemporary Now and Next” を展開する。“Korean Contemporary Now" では、既に国際的な舞台で活躍している中堅アーティストによる韓国のアートシーンを紹介し、 “Japanese and Korean Contemporary Next” では、1980 年代生まれを中心とした新人気鋭による日韓のアートシーンを紹介する。
その初となる今回の展示では、韓国出身の中堅作家であるイ・ウリムによる”記憶と忘却の間”から生まれる”想像力”がどのように作品に繰り広げられるかを披露する。
アルジェンチンの小説家、ボルヘス (Jorge Luis Borges, 1899-1986) は、 “想像力は、記憶と忘却の間で生まれる”と言った。ボルヘスは、私達の精神には、忘却という数多い穴が存在していて、私達は、歳月という悲しい風化作用の中、本来あった記憶の姿を変質させていくという。即ち、数多くの穴が空いている不完全な記憶は、不完全なままで存在するのではなく、人間の持つ創造性という強力な武器を持って、違うものとして完成される。
時に、現実が耐えられなくなる時、私達は、忘却という不完全さを持って、その過酷な現実に数多くの穴を空けることができ、やがてはその穴を想像力で埋めることで、また違う現実を作り上げることができる。
韓国のみならず、香港、アメリカ、台湾など海外の主要アートフェアと個展を行い、グローバルのアートシーンにおいて独自な画風を構築して来たイ・ウリムは、独創的な想像力で絶えずに新しい記憶を作り上げて来た。日常などの現実を心理的な画面構成で表現するイ・ウリムは、写実的な技法で設定された森、階段、野原、湖などの現実的な空間に、夢を見ているような人物や動物を配置して、現実と超現実(加工された現実)の境界を描き続けて来た。それは、本来の記憶をある程度残しておいたまま、忘却の穴を埋めて行く、加工者自身も気づいていないほど、巧に新しい記憶を作り上げていくプロセスとも似ている。彼の画面で見られる地の上を歩くようで、宙に浮いているような、現実に足をついているようで、超現実を生きる絶妙な境界が、観る者を自然に彼の作品の中へ吸い込んで行く要素である。
また、画面の中で一緒に置かれている人物と動物、物などのお互いに関連性のないように見える構図は、鑑賞者に本人だけの想像力と解釈を作り出す。この想像力で、私達は、私達の現実の記憶の穴を絶えずに埋めて行くのである。
Video
Artist Talk, Woolim Lee, 2023/7/8. 韓国語、日本語、英語で実施
Works
Woolim Lee
In a Wood Oil on Canvas, 130.3×97cm, 2023
Woolim Lee
A walk, Resin, Oil on Canvas, 117×91cm, 2021
Woolim Lee
A Walk, Oil on Canvas, 91×73cm, 2023
Woolim Lee
In a wood, Oil on Canvas, 91×73cm, 2023
Woolim Lee
Summer, Oil on Canvas, 91×73cm, 2023
Woolim Lee
A scene with a rabbit, Resin, Oil on Canvas, 65×53cm, 2023
Woolim Lee
A scene with a hen, Resin, Oil on Canvas, 53×45.5cm, 2021